金沢屋物語 第5話
金沢屋がなんとなく順調にスタートを切り、そこそこ話題にもしていただけたのは
なんといっても明確な「金沢屋」5つのお約束があったからだと思う。
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1、目利き委員会の目利きされたもののみを掲載。
2、地元金沢でも憧れの品。
3、つくり手の思い・生産者の顔が見える品。
4、旨いもの、美しいもの。
5、そんじょそこらにないもの。
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以上が5つのお約束で、金沢屋に掲載されるものは5つのお約束のうち基本的にはひとつも欠けてはいけないということになっている。
そして、金沢屋で扱うかどうかを決めるのは、運営をしている北陸朝日放送でもフィックスでもなく、ましてや私や金沢屋のスタッフでもない。
あくまでも、月に1回定期的に開かれる金沢屋目利き委員会がその判断をする。そして、その判断たるや基本的には全会一致という極めてハードルの高いものなのである。スタート当初は4人の目利き委員の方がいて、その4人全員が「金沢屋での展開を許す」と言ってくれなければだめなのである。
では、その目利き委員会というのはどのような観点で商品の目利きをするのか。
目利き委員の方々は石川を良く知っており、なおかつ商品についての造詣も深い、と同時に消費者としての目線を充分に持っている。
その目利きの方々が何を根拠に目利きをするのか。
お約束に書かれていることは当然なのだが、その他に大きなことは2つ、ひとつは商品にストーリーがあるかどうか、もうひとつは商品が安全・安心なものであるかどうか。とにかくこの2点については本当に厳しく精査していた。
商品にストーリーがあるかどうかとは材料が石川県産であることも重要なのだが、生産者やつくり手の皆さんがどのような思いでその商品を作っているのか、そのことを大きな判断基準としていた。
ある目利き委員会でこんなことがあった。あるぶどう農家の方がぶどうジュースを目利きに出品された。目利きのみなさんは商品を飲んで、甘すぎるぶどうジュースに異論を唱え、目利き却下となったのである。そのことを生産者にお伝えすると、生産者は「私が説明に行きますので再度目利き委員会に出品させて欲しい」と。そして、翌月の目利き委員会でその生産者の方は「本当のジュースとは」と、自らの商品に懸ける思いを滔々と語り、目利き委員全員がその思いに打たれ、その商品は目利きを通過し、晴れて金沢屋で展開することになったのである。
今、ご存知のとおり食に関しての見方が大変厳しくなっている。具体的な事例は枚挙にいとまがない。金沢屋も他山の石とすべきことは山ほどあるが、金沢屋はスタート当初から、食を扱う以上お客様からの信頼が大前提と考えていたし、今、その考えはより強固なものになっている。
そして、その信頼を支えるのが生産者、つくり手のみなさんの商品に対する思いなのである。旨いものはたくさんあるだろうし、美しいものもいっぱいあるだろう、ただそれは生産者・つくり手のみなさんの熱い思いが込められた安全で安心なものであるべきだし、それはやはりそんじょそこらにないものなのかもしれない。
金沢屋としては本当はそのような商品こそがそんじょそこらに溢れていて欲しいとも思うのだが・・・。